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行政書士のキャリアパス【経験者が6つ紹介】

行政書士資格者のキャリアといえば、行政書士事務所で勤務 or 開業の二択だと思っている方も多いかもしれません。もしキャリアプランをそれだけに絞ってしまうと、「士業全体的に将来性が低いよね」とか「ぶっちゃけ稼げるの?」といったネガティブな議論になってしまいがちです。

実際に行政書士のキャリアをテーマにしたネット記事やYouTube動画はそんな話題ばかりですよね。

しかし、実は行政書士資格を活かしたキャリアの選択肢は意外と多いのです。にもかかわらず、どういうわけかそれらのキャリアパスがメディア等で語られることはほぼありません。

そこで今回は、行政書士事務所以外で選択肢となり得る行政書士資格者のキャリアパスをいくつかご紹介します。

①事業会社:法務部門

行政書士ネクストキャリアとして比較的多いのは、事業会社の法務部門への就職です。

行政書士は法律系資格なので当然といえば当然なのですが、「行政書士資格があっても企業の法務部門には入れないよ」みたいな勝手なことを言う人々が結構います。行政書士が持つ独立開業のイメージのせいなのか分かりませんが、転職エージェントの人も平気でそういうことを言ってきたりします。

結論からいいますと、全くそんなことは無いのでガン無視してもらって結構です。
なぜそう言い切れるのかというと、私自身が実際に歩んだキャリアだからです。さらには、私だけでなく周りにも同じキャリアの人がいます。

ただ一方で、「行政書士資格さえあれば余裕」という生易しいものではありません。他の職種と同様に(新卒採用でない限りは)一定の実務経験が求められます。

ここでいう実務経験というのは、当然法務部門に関連する実務経験になりますので、具体的には「企業法務経験」です。許認可業務も企業法務の一つではありますが、一般的な会社ではそこまで頻発する業務ではありません。

従って、許認可業務だけでなく、会社法対応や規制法対応の経験があると強いです。規制法対応については、許認可案件に付随して発生することも多いはずですので、仮に転職希望先の事業と関連が薄い領域だったとしても積極的にアピールすることをお勧めします。

もし契約書作成・レビュー経験があれば非常に強力な武器になるのですが、行政書士業務としてはあまり一般的な業務では無いため、アピールできるほどの経験がある方はそこまで多くないのではないかと思います。もちろん経験を有する方なら絶対にアピールすべきポイントです。

なお、企業によっては行政書士等の士業事務所での業務を実務経験として考慮してくれないところもありますので、その点は要注意です。

他社の法務部門から転職する他の候補者と比べられたときに、実務経験という土俵では勝てないので、例えば「様々な企業のケースを見てきました」など、プロフェッショナルファームならではの強みを活かしたアピール戦略が必要です。

続いて、みなさんが気になるであろう年収水準についても触れていきます。いくら特殊性が強い法務部門とはいえ、当然企業に所属する身ですので、その企業の給与水準が重要なファクターであり、「どの企業に入るか」が年収を左右することは言うまでもありません。

その点、法務系の転職市場はここ10年くらいずっと売り手市場ですので、転職を繰り返してランクアップを狙うことができます。

いわゆる大手企業(およそ社員数1,000人規模~)の法務部門の場合、管理職でなくても年収600~800万円程度は十分狙えるでしょう。管理職である課長クラス以上になれば、年収1,000万円超えが見えてくるケースが多いです。

さらに、有名グローバル企業(日系・外資問わず)ともなれば、管理職でなくても年収1,000万円超えが狙える世界になってきます。

ただし、そういった一流企業の法務部門に入るには、必ずと言って良いほど高い英語力が求められます。最終的に高みを目指すのであれば、(ネイティブでもない限り)英語の勉強は基本的に避けて通れないと思ってください。

TOEICの点数でいうと、最低でも700点台は持ってないと、法務の転職市場では「海外案件ができる人」と評価されない印象があります。大手企業を狙うのであれば、できれば800点以上は取っておきたいところです。

ちなみに、有名グローバル企業の法務部門で求められる英語力はTOEICでは測りにくい(多くの社員が留学経験や海外駐在経験を有しており、ネイティブもゴロゴロいる)のですが、あえて足切り基準的な観点でいえば、850点以上は必要かと思われます。

 

②事業会社:コンプライアンス部門

規模が大きい企業であれば、法務部門とは独立する形でコンプライアンス部門を設けていることがあります。

コンプライアンス部門では、主に社内規程整備・コンプライアンス教育・法令遵守運用整備・内部通報対応などを担当している部署です。中でも内部通報対応は、相応の経験やスキルが要求されるうえに極秘情報を取り扱うため、花形業務とされることも多い領域となります。法務部門でいうM&Aみたいなイメージです。

法務部門は直接的な法務アクション(訴訟・契約・法令解釈など)を担当する一方、コンプライアンス部門は「社内で法令遵守を周知徹底させる役割」を担っています。

従って、法務部門ほどでは無いにしても一定の法律知識が求められるため、行政書士資格者のキャリア候補になってきます。

ただし、行政書士業務との親和性という観点でいえば、法務部門ほど強くはありません。

コンプライアンス領域の行政書士業務を挙げるとすると、規制法対応や社内規程・研修資料の作成くらいでしょうか。単独でクライアントから依頼されるケースはそこまで多くないでしょう。

そういった事情もありますので、行政書士業務の実務経験だけを強みにして戦うのは少々厳しいかもしれません。

となると、資格を強みにするアプローチになるのですが、その場合は行政書士に加えて公認不正検査士(CFE)や公認内部監査人(CIA)などのコンプラ・監査系の資格も取得しておくこと強くお勧めします。

そうでないと、面接官から「あなた行政書士なんだよね?なんで法務じゃなくてコンプラ志望なの?」という印象を持たれてしまう可能性があります。

コンプライアンス部門に所属する社員のバックグラウンドとして一番多いのは法務部門からの異動・転職者です。

それ以外では、やはり法令遵守に関連する部署(内部監査・経理・人事・サステナビリティなど)から異動・転職してくることが多く、士業から直接コンプライアンス部門に転職するケースは(法務部門等と比べると)あまり多くないかもしれません。

しかし、例えば規制事業を営む企業であれば、許認可や規制法対応の経験が豊富な行政書士コンプライアンス部門に迎え入れたいと考える採用担当者は多いはずですので、キャリア候補から除外してしまうのは勿体ないと思います。

年収水準については、基本的に前述の法務部門と同じです。独立したコンプライアンス部門を持つ企業となれば、ほとんどが大企業・グローバル企業になりますので、それなりの待遇が期待できるでしょう。

ただし、それは同時に海外対応が求められることも意味しますので、法務部門への転職以上に英語力を身につけておくのが無難です。

それなりのランクの企業を狙うのであれば、やはりTOEIC800点以上は取っておきたいところです。(もちろん海外経験があれば不要ですが)

 

③事業会社:政策渉外部門

「政策渉外」という言葉を聞き慣れない方も多いかもしれませんが、簡単に言ってしまえば、政府機関とのコミュニケーションを意味します。

大手企業や規制事業を営む企業においては、日常的な官公庁とのコミュニケーションが求められますので、政策渉外部門(単に「渉外部門」と呼ばれることも多いです)を設置しています。となると、行政書士の強みが活かせるフィールドになるわけです。

多くの行政書士がクライアントから依頼される許認可業務は、政策渉外業務に近い性質を持っています。

行政機関からの厳しい要求に応えつつクライアントが求める成果を取りに行く姿勢は、まさに政策渉外業務に求められる能力そのものです。

ただし、政策渉外部門の業務には、ロビー活動や消費者センター対応など、一般的な行政書士では経験できない業務も多く含まれるため、完全に実務がマッチするというわけではありません。

強みとなるのは、「行政と企業の橋渡し」としての汎用的なスキルになります。例えば、相手が行政機関といえど、内部の人間関係や力関係を把握することが交渉において重要であるという点は、ベテランの行政書士ほど身に染みて分かっているものです。

そういった「法律や教科書から学べないノウハウ」について自分の経験も交えて語れる人は、政策渉外部門への就職を成功させる確率が非常に高いと言えます。

(ちなみに参考までですが、司法書士業務は政策渉外に活かせる経験として評価されません。登記申請は許認可申請と異なって形式的なチェックに終始することが多く、行政との「交渉要素」が皆無に近いためです。)

政策渉外部門への転職においては、法務部門やコンプライアンス部門ほどに法律知識・資格・英語力は重視されない分、実務経験という土俵で戦う必要が出てきます。

主な競合相手(他の採用候補者)は元公務員です。当然ながら、彼らは行政機関の内部事情を誰よりも把握していますので、政策渉外部門にとっては是非とも欲しい人材なわけです。

行政書士がそれに対抗するには、やはり「行政と企業の橋渡し」としての経験値がキーになりますので、アピールポイントを間違えないように気を付ける必要があります。

年収水準については、やはり前述の法務部門と同じです。英語力と年収がそこまで比例しない点(日本人が海外の政策渉外を担当するケースは少ない)は政策渉外部門の嬉しいところですが、その反面、実務経験・ポテンシャル・年齢など、今さら変えようがない要素でチャレンジできる企業ランク(=年収)が決まってしまう怖さもあります。

なお、法務部門に比べると求人数そのものが多くない印象ですので、強いこだわりや特殊事情がない限りは、政策渉外部門よりも法務部門をターゲットにする方が転職成功率は高いでしょう。

 

④コンサルファーム:リスクコンサル部門

今絶好調のコンサル業界にも、行政書士が活躍できるフィールドがあります。

いわゆる総合コンサルティングファームと言われるところ(特にBIG4と呼ばれる監査法人系コンサルファーム)には、リスクコンサルを担う部門があります。

リスクコンサルというのは、文字通り、企業が抱えるリスクへの対応を支援するサービスになりますが、行政書士と強く関連するのは、主に法令遵守・ガバナンス対応」の分野になるでしょう。

プロジェクトの例としては、グループガバナンスやコンプライアンス体制の設計・構築の支援などがあります。

行政書士は許認可対応や規制法対応が得意領域ですので、この強みを活かしてリスクコンサルに転職することも可能です。

ただ、リスクコンサルは法務よりもコンプライアンスの色が強い分野になりますので、行政書士業務の全てがリスクコンサル業務に直結するというわけではありません。

中~大手企業の行政規制(許認可含む)への対応や社内規程作成の実務経験があれば強いですが、そうでない場合は公認不正検査士(CFE)や公認内部監査人(CIA)などのコンプラ・監査系の資格を取得して、この領域の知識・興味をアピールすることをお勧めします。

そして、やはりリスクコンサルにおいても英語力が求められますので、目立った海外経験がない方はTOEICの点数(最低でも700点台、できれば800点以上)を取得しておくのが良いです。

リスクコンサル部門に限らずですが、大手コンサルファームのクライアントは大手事業会社がメインです。ということは、ほとんどのクライアントは海外にグループ会社を持っており、グループ規模でのリスク対応を支援するには当然ながら英語で対応しないといけない場面が出てくるのです。

その他にリスクコンサル部門への転職のカギとなるのが、ITの知識です。

総合コンサルのプロジェクトの多くは、ITシステム導入がセットになっています。コンプライアンスやガバナンス強化のアドバイスをしながら、それに必要なITシステム導入を提案・実行するというのが典型的なプロジェクトの流れとなります。

行政書士からの転職者は、当然ながら「コンプライアンスやガバナンス」の領域で強みを発揮するポジションに就くことになり、ITシステム導入のフェーズではその道のプロが対応することになるでしょう。しかし、プロジェクトとして一体になっている以上、始めのフェーズであるコンプライアンス・ガバナンス体制提案の時点で、その手段となるITシステムの機能・仕様を無視することはできないと言えます。

そうなると、コンプライアンス・ガバナンスの知識に加えて、ITの知識がある人が重宝されるわけです。従って、IT関連の実務経験がある人は積極的にそれをアピールし、そういった経験がない人はIT系の資格を取得しておくと良いと思います。

続いて年収水準についてです。リスクコンサルの年収水準を知るのは簡単で、ネット上であふれている総合コンサルファーム(特にBIG4)の職位別給与水準を参考にすれば良いだけです。

ざっくりイメージとしては、アナリスト・アソシエイト・コンサルタント等と呼ばれる職位(事業会社でいう一般社員)が年収500~700万円程度、シニアアソシエイト・シニアコンサルタント等と呼ばれる職位(事業会社でいう主任・係長クラス)が年収800~1000万円程度、マネージャーと呼ばれる職位(事業会社でいう課長クラス)が年収1,000~1,400万円程度になります。

それ以降もシニアマネージャーやディレクター等の上位の職位はありますが、行政書士からの転職の場合は、一番高い場合でもマネージャーからのスタートとなります。(シニアマネージャーやディレクターからスタートするのは、他のコンサルファームで同等の職位だった人が転職するときくらいです)

いずれにしても、さすがコンサル業界というべきか、給与水準が高いですね。

コンサル業界と聞くと「給与は高いけど激務なんでしょ?」というイメージを持つ方も多いですが、近年の働き方改革を受けて激務度は以前よりだいぶ緩和されています。

ただ、それでもプロジェクトの繁忙期はかなりの残業時間になると思いますし、事業会社のコーポレート部門とは違ってクライアントワークになるので、まったり自分のペースで仕事したい人には向かないキャリアと言えます。

 

監査法人:アドバイザリー部門

大手監査法人にはアドバイザリー部門と呼ばれる部署があり、売上向上やコストカット等のビジネス領域ではなく、ガバナンス・リスク・コンプライアンス等のコーポレート領域のアドバイザリーサービスを提供しています。

前述のリスクコンサルと似ていると思う方が多いと思いますが、監査法人のアドバイザリーは会計監査から派生したサービスになるので、ITやオペレーションに付随するというよりも、シンプルに法令遵守アドバイスの要素が強いイメージです。

ただ、大手プロフェッショナルファームの世界では、グループ法人や部門の間での領域被りはあるあるですので、そこまで細かく区別を気にしなくても良いかもしれません。

行政書士は許認可対応や規制法対応が得意領域ですので、この強みを活かして監査法人アドバイザリー部門に転職することも可能です。

行政書士監査法人に転職するのは不自然だと思う方もいるかもしれませんが、大手監査法人には公認会計士以外の方も多く所属しています。特にアドバイザリー部門においては、公認会計士以外(金融機関や事業会社出身者など)の方が多いくらいです。

従って、行政書士から監査法人への転職者は、公認会計士以外の枠として、法律や行政規制の知識を武器に活躍していくことになります。

転職において有利になる実務経験・スキルは、前述のリスクコンサルとほぼ同じです。

ただ、リスクコンサルほどにIT知識は求められない傾向があると思われます。その他の違いでいうと、監査法人アドバイザリー部門のクライアントは金融機関が多いので、金融業界の知見や実務経験があると強いです。

また、医療系の許認可・規制対応を専門にしている行政書士もウケが良いと思います。

年収水準については基本的にリスクコンサルと同じだと思ってもらって構いません。特にBIG4監査法人は、コンサル部門(法人)と近い給与水準になっているケースが多いと思われます。

さてここで、監査法人のキャリアに関して、私自身が経験した面白い体験談を紹介します。

私が事業会社の法務部門に所属していたときに、LinkedIn(ビジネス・キャリア寄りのSNS)を通じて、あるBIG4監査法人の人事担当からスカウトを受けたことがありました。その人事担当の方に「なぜ私に声を掛けていただいたのですか?」と聞いたところ、はっきりと「一番の理由は行政書士資格者だからです」と即答されました。

私が所属する事業会社は、世界的にも有名な(日本人では知らない人はいない)企業ですので、てっきり私はその企業ブランドに目をつけられてスカウトされたのだと思っていましたが、実際には違ったのです。

それほどにプロフェッショナルファームでは(クライアントからの信頼に影響する)資格を重視する傾向があり、加えて、行政規制対応のイメージが強い行政書士の強みを大きく感じた瞬間でした。

 

⑥保険会社:リテール営業部門

最後に、行政書士からの転職としては変則的なキャリアである、保険会社のリテール営業をご紹介します。

今までご紹介したキャリアと比べたときに、行政書士業務との親和性は一番低いですが、比較的求人数が多く間口は広い印象ですので、プランB的な位置づけで挙げたいと思います。

「なぜ行政書士が保険の営業を?」と思う方は多いと思いますが、保険には必ずと言って良いほど法律問題が絡んできます。分かりやすいところで言うと、生命保険には相続の問題が絡み、損害保険には損害賠償の問題が絡みます。

保険会社のリテール営業担当者は、ほとんどの人がファイナンシャルプランナー保有しており、法律領域についても一定の知識を持っている人がいます。しかしながら、弁護士法や行政書士法の規制により、法律領域のアドバイスに強く踏み込むことはできません。

そこで強いのが行政書士資格を持つ営業担当者」です。保険知識だけでなく法律知識もある営業担当者の方がより顧客から信頼されやすいでしょうし、上記の業法の問題もクリアできます。

ただし、顧客から法律相談に乗る場合には、あくまで行政書士個人の立場で対応する必要がある(保険会社は弁護士法人でも行政書士法人でも無い)点には要注意です。

また、法的紛争の領域まで踏み込んでしまうと弁護士法の問題も出てきますので注意しましょう。

続いて年収水準についてですが、保険会社と一言でいっても多種多様のため一般化が難しく、こればかりは会社次第としか言いようがないので、会社ごとに転職情報サイト等を参照することをお勧めします。

副業が認められている保険会社であれば、顧客から行政書士業務(相続や自賠責保険手続きなど)を受注することも許される可能性があり、会社の給与に加えて収入を増やすこともできます。この点も事前に調べたり面接で聞いておくのが良いでしょう。

最後に、このキャリアを選択するときの注意点をお伝えします。

それは、一旦このキャリアを選択した場合には、法律・行政領域の専門性は失われてしまうという点です。

これまで紹介した事業会社の各部門やプロフェッショナルファームは、「法律・行政領域のプロ」として活躍するキャリアになりますが、保険会社の営業はどこまでいっても営業です。

ネクストキャリアとして「法律・行政領域のプロ」を目指すことは非常に難しくなってしまうので、今後ずっと保険会社または営業の世界で生きていく覚悟を持ったうえで転職するようにしてください。

専門性と年収は基本的に比例しますので、もし高収入を目指すのであれば、グローバル企業やプロフェッショナルファームで昇格していくのが一番確実です。

せっかく行政書士資格を保有しているのですから、まずは専門性のある高年収のキャリアを目指していくことをお勧めします。

 

まとめ

以上、行政書士資格者の6つのキャリアパスを紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

「こんなキャリアがあったのか」と驚かれた方も多いのではないかと思います。ですが、実はこれでもまだまだ紹介しきれていません。

基本的な考え方として、法律や行政対応が関連する職業は、全て行政書士資格者のセカンドキャリアになり得ると考えてもらって結構です。それくらい拡がりや可能性がある資格であると言えます。

これは決して贔屓目で言っているわけではなく、私自身や私の周りの人の経験・キャリアに基づく事実ですので、その辺のネット記事やYouTube動画(特に根拠もなく行政書士資格を叩いているもの)は安心して無視してください。

あなたのキャリアは、あなたが行動を起こさない限り、誰にも予測できないものです。

断片的なイメージで色々と勝手なことを言う人は多いですが、そういったノイズに惑わされて大きなチャンスを逃すことのないように注意しましょう。

行政書士関連の記事はこれからも発信していく予定ですので、是非またご覧ください。
長文にもかかわらず最後までご覧いただきありがとうございました。

 

※補足※

最後の最後に、誤解を防ぐために一つだけ補足しておきたいことがあります。それは司法書士資格者との比較や違いについてです。

この記事で挙げた6つのキャリアは、全て行政書士特有の派生キャリアであり、(よく比較されがちな)司法書士の場合は大きく状況が異なります。

この点は別途個別の記事でも書こうと思っていますが、事業会社やコンサルファーム等への転職という観点で言えば、司法書士は弁護士と差別化することが難しく、残念ながら基本的には負ける運命にあります。

行政書士は「行政対応」という分野で弁護士と差別化できる一方、司法書士は弁護士と差別化できる武器を持っていません。(登記申請が行政対応として評価されないのは、政策渉外の項目で説明した通りです)

よって、転職市場においては、司法書士資格者は「法律」という土俵のみで戦わざるを得ないのですが、これでは絶対に弁護士資格者には勝てません。

昔と異なり、事業会社にもコンサルファームにも弁護士資格者が多く在籍している時代です。この非常に強力なライバルと差別化できない限り、キャリアの選択肢は思うほどには増えないということです。

もちろん、司法書士は登記という分野において弁護士にも負けない専門性を持っています。

しかしながら、残念なことに多くの企業では商業登記という実務を重視していません。なぜなら違反(登記懈怠)したときのリスクが著しく低く、この分野に投資(雇用含む)をしようと考える企業はほぼ無いからです。

そして、不動産登記に至ってはそもそも実務自体が発生しません。銀行や不動産会社の場合は事情は異なりますが、あまりに特殊なケースですのでここでは割愛します。

さて、行政書士は許認可・行政規制対応という分野で強みを発揮しますが、この分野は違反やミスしたときのリスクが超絶甚大です。許認可に至っては、もう会社ごと吹っ飛びます。

従って、この分野に投資(雇用含む)しないとヤバいのです。だからこそ事業会社でもコンサルファームでも、行政書士資格者の需要があるのです。

司法書士資格者は、司法書士事務所でキャリアを積むケースが多い(それなりの安定は期待できる)ため、あえて事業会社やコンサルファームに転職するケースは多くないと思いますが、「行政書士にできるなら司法書士にもやれるはず!」と勘違いしてしまうのは非常に危険ですので、警告しておきたかった次第です。

これから司法書士資格を取得しようとする人は、基本的には一生司法書士として生きていく覚悟のうえで取得するようにしましょう。

それが怖いなら、絶対に弁護士資格か行政書士資格を選ぶべきです。キャリアの選択肢とリスクヘッジ効果が格段に違います。

少しネガティブなことを書いてしまいましたが、決して司法書士を見下す趣旨ではなく、あくまでキャリア観点での客観的な評価をコメントしたまでです。

司法書士は取得難易度が高く、取得者の努力・実力は本当に素晴らしいものだと思います。だからこそ、そんな努力・実力が無駄になってしまうことの無いよう、慎重にキャリアを選択していただきたいと思っております。

以上、補足まででした。