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行政書士資格をイチ推しする理由【企業法務マンが解説】

この記事を見ている方の中には、行政書士資格に興味があっても本当に取得すべきか迷っている方もいるのではないでしょうか。

行政書士資格に限らず、どの資格についてもネガティブな情報があふれていますので、気持ちが揺らいでしまうことも多いですよね。

この記事では、行政書士から大手グローバル企業(法務コンプライアンス部門)に転職した私が、実体験をベースにして行政書士資格の価値やメリットについて解説します。

具体的なキャリアがイメージできる貴重な情報だと思いますので、行政書士資格を検討している方は是非ともご覧ください。

①豊富なキャリアパス

行政書士資格者のキャリアといえば、行政書士事務所で勤務 or 開業の二択だと思っている方も多いかもしれません。

しかし、実は行政書士資格を活かしたキャリアの選択肢は意外と多いのです。にもかかわらず、どういうわけかそれらのキャリアパスがメディア等で語られることはほぼありません。

そこで今回は、行政書士事務所以外で選択肢となり得る行政書士資格者のキャリアパスをいくつかご紹介します。

事業会社:法務コンプライアンス部門

行政書士キャリアパスとして比較的メジャーなのは、事業会社の法務部門・コンプライアンス部門への就職です。

行政書士は法律系資格なので当然といえば当然なのですが、「行政書士資格があっても企業の法務部門には入れないよ」みたいな勝手なことを言う人々が結構います。行政書士が持つ独立開業のイメージのせいなのか分かりませんが、転職エージェントの人も平気でそういうことを言ってきたりします。

結論からいいますと、全くそんなことは無いのでガン無視してもらって結構です。

なぜそう言い切れるのかというと、私自身が実際に歩んだキャリアだからです。さらには、私だけでなく周りにも同じキャリアの人がいます。

しかし、当然ながら行政書士資格さえあれば約束されるという簡単なものではなく、(新卒採用でない限りは)一定程度の実務経験が求められます。

許認可業務も企業の法務コンプライアンス業務の一部ですが、一般的な企業ではそこまで頻発する業務ではありません。

従って、許認可業務だけでなく、会社法対応や規制法対応の経験があると強いです。規制法対応については、許認可案件に付随して発生することも多いはずですので、仮に応募企業と関連が薄い領域だったとしても、積極的に実務経験をアピールすることをお勧めします。

なお、企業によっては行政書士等の士業事務所での業務を実務経験として考慮してくれないところもありますので、その点は要注意です。事前に募集要項をよく確認するようにしましょう。

事業会社:政策渉外部門

「政策渉外」という言葉を聞き慣れない方も多いかもしれませんが、簡単に言ってしまえば政府機関とのコミュニケーションを意味します。

大手企業や規制事業を営む企業においては、日常的な官公庁とのコミュニケーションが求められますので、政策渉外の専門部署を設置することが多々あります。そこが行政書士の強みが活かせるフィールドになるわけです。

多くの行政書士がクライアントから依頼される許認可業務は、政策渉外業務に近い性質を持っています。

行政機関からの厳しい要求に応えつつクライアントが求める成果を取りに行く姿勢は、まさに政策渉外業務に求められる能力そのものです。

ただし、政策渉外部門の業務には、ロビー活動や消費者センター対応など、一般的な行政書士では経験できない業務も多く含まれるため、完全に実務がマッチするというわけではありません。

強みとなるのは、「行政と企業の橋渡し」としての汎用的なスキルになります。例えば、相手が行政機関といえど、内部の人間関係や力関係を把握することが交渉において重要であるという点は、ベテランの行政書士ほど身に染みて分かっているものです。

そういった「法律や教科書から学べないノウハウ」について自分の経験も交えて語れる人は、政策渉外部門への転職を成功させる確率が非常に高いと言えます。

コンサルファーム:リスクコンサル部門

今絶好調のコンサル業界にも、行政書士が活躍できるフィールドがあります。

いわゆる総合コンサルティングファームと言われるところ(特にBIG4と呼ばれる監査法人系コンサルファーム)には、リスクコンサルを担う部門があります。

リスクコンサルというのは、文字通り、企業が抱えるリスクへの対応を支援するサービスになりますが、行政書士と強く関連するのは、主に法令遵守・ガバナンス対応の分野になるでしょう。

プロジェクトの例としては、グループガバナンスやコンプライアンス体制の設計・構築の支援などがあります。

転職の際に有利になる経歴としては、中~大手企業の行政規制(許認可含む)への対応や社内規程作成の実務経験があれば強いですが、そうでない場合は公認不正検査士(CFE)公認内部監査人(CIA)などのコンプライアンス・監査系の資格を取得して、この領域に対する知識・興味をアピールすることをお勧めします。

その他にリスクコンサル部門への転職のカギとなるのがITの知識です。

総合コンサルのプロジェクトの多くは、ITシステム導入がセットになっています。コンプライアンスやガバナンス強化のアドバイスをしながら、それに必要なITシステム導入を提案・実行するというのが典型的なプロジェクトの流れとなります。

そうなると、コンプライアンス・ガバナンスの知識に加えて、ITの知識がある人が重宝されるわけです。従って、IT関連の実務経験がある人は積極的にそれをアピールし、そういった経験がない人はIT系の資格を取得しておくと良いと思います。

監査法人:アドバイザリー部門

大手監査法人にはアドバイザリー部門と呼ばれる部署があり、売上向上やコストカット等のビジネス領域ではなく、ガバナンス・リスク・コンプライアンス等のコーポレート領域のアドバイザリーサービスを提供しています。

前述のリスクコンサルと似ていると思う方が多いと思いますが、監査法人のアドバイザリーは会計監査から派生したサービスになるので、ITやオペレーションに付随するというよりも、シンプルに法令遵守アドバイスの要素が強いイメージです。

ただ、大手プロフェッショナルファームの世界では、グループ法人や部門の間での領域被りはあるあるですので、そこまで細かく区別を気にしなくても良いかもしれません。

行政書士監査法人に転職するのは不自然だと思う方もいるかもしれませんが、大手監査法人には公認会計士以外の方も多く所属しています。特にアドバイザリー部門においては、公認会計士以外(金融機関や事業会社出身者など)の方が多いくらいです。

従って、行政書士から監査法人への転職者は、公認会計士以外の枠として、法律や行政規制の知識を武器に活躍していくことになります。

転職の際に有利になる実務経験・スキルは、前述のリスクコンサルとほぼ同じです。ただ、リスクコンサルほどにIT知識は求められない傾向があると思われます。その他の違いでいうと、監査法人アドバイザリー部門のクライアントは金融機関が多いので、金融業界の知見や実務経験があると強いです。

また、医療系の許認可・規制対応を専門にしている行政書士もウケが良いと思います。

 

②高収入への扉

行政書士資格を取得した後の収入は人それぞれだと思いますが、ここでは行政書士資格や経験を活かして企業に就職・転職した場合に想定される年収例をご紹介します。努力や工夫次第では高収入にありつけることが伝わると思います。

なお、行政書士事務所で勤務したり開業する場合の年収例については、他のネット記事やYouTube動画などで多く紹介されていると思いますので、それらを参考にしていただければと思います。

大手事業会社の年収例

前述の通り、行政書士資格を活かして事業会社(法務・コンプライアンス部門など)に就職するキャリアパスは比較的メジャーです。

法務コンプライアンス系の転職市場はここ10年くらいずっと売り手市場ですので、転職を繰り返してランクアップを狙うことができます。よって、最終的に大手企業に辿りつけるケースも多いと思いますので、その場合の年収例をご紹介します。

大手企業(およそ社員数1,000人規模~)の場合、管理職でなくても年収600~800万円程度は十分狙えるでしょう。管理職である課長クラス以上になれば、年収1,000万円超えが見えてくるケースが多いです。

さらに、有名グローバル企業(日系・外資問わず)ともなれば、管理職でなくても年収1,000万円超えが狙える世界になってきます。

ただし、そういった一流企業(特に法務・コンプライアンス部門)に入るには、必ずと言って良いほど高い英語力が求められます。最終的に高みを目指すのであれば、(ネイティブでもない限り)英語の勉強は基本的に避けて通れないと思ってください。

TOEICの点数でいうと、最低でも700点台は持ってないと、法務の転職市場では「海外案件ができる人」と評価されない印象があります。大手企業を狙うのであれば、できれば800点以上は取っておきたいところです。

ちなみに、有名グローバル企業の法務・コンプライアンス部門で求められる英語力はTOEICでは測りにくい(多くの社員が留学経験や海外駐在経験を有しており、ネイティブもゴロゴロいる)のですが、あえて足切り基準的な観点でいえば、850点以上は必要かと思われます。

大手プロフェッショナルファームの年収例

前述の通り、行政書士資格を活かしてコンサルファームや監査法人に就職するキャリアパスがあります。

コンサルファームや監査法人のように、専門知識やノウハウをサービスとして企業向けに提供する会社を「プロフェッショナルファーム」と呼びますが、ここでは大手のプロフェッショナルファーム(特にBIG4系ファーム)に就職した場合の年収例をご紹介します。

ざっくりイメージとしては、アナリスト・アソシエイト・コンサルタント等と呼ばれる職位(事業会社でいう一般社員)が年収500~700万円程度、シニアアソシエイト・シニアコンサルタント等と呼ばれる職位(事業会社でいう主任・係長クラス)が年収800~1000万円程度、マネージャーと呼ばれる職位(事業会社でいう課長クラス)が年収1,000~1,400万円程度になります。

それ以降もシニアマネージャーやディレクター等の上位の職位はありますが、行政書士からの転職の場合は、一番高い場合でもマネージャーからのスタートとなります。(シニアマネージャーやディレクターからスタートするのは、他のファームで同等の職位だった人が転職するときくらいです)

いずれにしても、さすが大手プロフェッショナルファームというべきか、給与水準が高いですね。

なお、大手プロフェッショナルファームでも英語力が求められることが多いので、それなりのポジションを狙うのであれば、やはりTOEIC800点以上は取っておきたいところです。(もちろん海外経験があれば不要ですが)

 

③社会的ステータス

どの士業も一定の社会的ステータスを有しています。弁護士や公認会計士などは分かりやすいですが、「じゃあ行政書士はどうなの?」と思う方も多いと思います。

ここでは、私が行政書士資格者として経験した実話に基づいて、社会における行政書士のステータスのイメージをお伝えします。

住宅ローン審査での評価

数年前、私は住宅ローンを組んでマンションを購入したのですが、そのローン審査の際に興味深い出来事がありました。

私は当時から大手グローバル企業に勤めていたので、支払能力については一定の評価をされていたと思いますが、ローン会社の担当者から保有資格についても聞かれたため、行政書士資格を保有している旨を伝えました。

そうしたところ、その担当者から「そうなんですね。では申請書に行政書士の資格証を添付していただけますか?」と言われたのです。

これはつまり、大手グローバル企業の社員という身分に加えて評価されるほどに、行政書士資格そのものが支払能力の担保となることを意味しています。

一部のネット記事などでは、散々「食えない」とか「役に立たない」などと言われている行政書士ですが、もし本当にそうなのであれば、住宅ローン審査で一切興味を持たれず、資格証の添付など要求されないはずです。

従って、(他の士業は分かりませんが)少なくとも行政書士資格は、住宅ローン審査で加点されるほどの社会的評価・信頼があると考えていただいて良いと思います。

法律プロ集団での位置づけ

続いて、私が大手グローバル企業のグループ本社にいたときの話を紹介します。

私はコンプライアンス部門に所属していましたが、当時の直属の上司が東大卒・ニューヨーク州弁護士というゴリゴリなハイスペック人材でした。加えて、20年近く法務コンプライアンス分野を経験している大ベテランであり、地頭も良い人です。

その上司は、私が行政書士資格者であることを知っており、とある案件で行政処分や行政規制のリサーチが必要になったときに、「この分野で分からないことがあったら〇〇さん (私) に聞くのが良いね」と会議の場でコメントしてくれたことがあります。

つまり、弁護士資格者の大ベテランである「その道のプロ」から見ても、行政書士資格者である私は行政規制対応の専門家という評価を得ていたというわけです。

法務コンプライアンスのプロで構成されるハイレベルな集団においても、行政書士資格者は十分なプレゼンスを発揮できることが分かります。

婚活市場でのブランド

婚活市場というのは、リアルに職業のブランド力が評価される非常にシビアな場です。(特に男性側にとっては顕著ですね)

さて、婚活パーティーやイベントには様々なタイプがありますが、中には一定の参加要件を設けているものがあります。特に多いのが、女性側には年齢の要件があり、男性側には職業や年収の要件があるというパターンです。

この男性側の参加要件として、「士業資格保有者」という要件が設けられることがあります。ここでいう士業資格には、ほとんどの場合は行政書士資格も含まれます。

そして、その行政書士を含む士業資格者の男性が参加する婚活パーティー・イベントの評判はどうかというと、女性からの人気が非常に高いです。開催が告知されると、すぐに女性側の枠が埋まってしまうことも多いです。

もちろん、行政書士だけでなく士業全体のブランド力によるものだと思いますが、忖度して婚活パーティー・イベントを選ぶ人などいませんので、リアルなブランド評価として非常に参考になるでしょう。

 

④コストパフォーマンス

どんな資格を取得するにしても、勉強のために時間を費やす必要があります。また、効果的に勉強するために高い教材を買ったり、資格スクールに通うための費用が必要になることもあります。

資格を取得した後の効果(収入やステータスなど)が良くても、その資格を取得するために多大な時間や費用がかかってしまうようでは、必ずしもコストパフォーマンスが良いとはいえません。最悪の場合は、結果的に試験に合格できずに全てが無駄になってしまう可能性すらあるのです。

ここでは、行政書士資格のコストパフォーマンスに焦点を当てていきます。

受験資格なし

資格取得を目指すにあたって意外と厄介なのが受験資格です。特に士業の資格試験は、一定の学歴等を受験資格とするケースが多々あります。

受験資格が設けられている場合、まずはその受験資格を得るために時間やお金(学費など)を費やす必要が生じてしまい、本末転倒となってしまう場合もあります。

その点、行政書士試験には受験資格はありません。年齢・学歴・国籍等に関係なく誰でも受験できます。学歴の要件もないので高卒でも中卒でも関係なく受験することができます。

さらには、試験合格後に行政書士として登録する際の登録要件も実質的にありません。厳密には、未成年・成年被後見人被保佐人禁錮以上の刑に処せられてから3年を経過しない者などは登録できませんが、ほとんどの社会人にとっては問題ない要件と言えるでしょう。

(他の士業の場合、登録要件として一定の実務経験等を課すものも多いです)

独学でも取得可能

資格のコストパフォーマンスを判断する要素の1つが、「独学でも合格可能か」という点です。

合格レベルの実力に達するために資格スクールに通う必要がある場合、当然このための時間とお金がかかってしまいます。

行政書士試験は独学でも合格可能な試験です。資格スクールに通う方も多いですが、それでも授業料は(他の資格に比べると)そこまで高額ではありません。

私は独学で合格しましたので、要した費用は教材費の2万円程度です。テキストと問題集を合わせても5-6冊程度しか購入しませんでした。

キャリア中断は不要

資格試験によっては、受験資格を得るために大学院に通ったり、資格スクールに通う時間を捻出するために、今就いている仕事を中断する(会社を辞める)必要が出てくる場合もあります。

仕事を中断する間は当然収入が無くなりますし、職務経歴に空白ができてしまうことになります。これは長い目で見てもかなりのリスクです。

この点、行政書士試験に関しては働きながら勉強することができますので、そういったリスクはありません。

もちろん、働きながら勉強をするのはしんどいものですが、1-2年も頑張れば十分合格レベルに達することができると思いますので、それを考えればモチベーションも上がりやすいものです。

そう言う私も働きながらコツコツ勉強して1年半後に無事に合格することができました。

 

まとめ

以上、行政書士資格のリアルな価値やメリットについて説明しましたが、どのような印象を持たれたでしょうか。

総括すると、行政書士資格は、取得した後の効果(キャリアパス・収入・ステータス等)が期待できる一方で、取得に要するコスト(時間・費用等)は少ないということが言えると思います。

年齢によっては資格取得を躊躇してしまうケースもあると思いますが、行政書士資格はセカンドキャリアや副業にも活かしやすいので、若い方に限らずミドル・シニア層の方にもお勧めできる資格です。

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行政書士関連の記事は今後もアップする予定ですので、是非またご覧ください。